富山県済生会高岡病院
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冬の皮膚病について

 世の中はますます便利になり、以前は季節限定のものだった食品や花などが一年を通して手に入るようになり、日本人の季節感も様変わりしている今日この頃です。皮膚科の外来に来られる患者さんも以前ですと夏にしか見られなかったようなあせも、とびひなどが生活環境の変化のせいか年中見られるようになってきました。しかしながら、それでも季節により多い疾患はあります。今回、その中でも冬に多い病気についてお話しいたします。冬になると増えてくるものの中には、しもやけ(凍瘡)、お年寄りや子どもに多いカサカサ肌の湿疹、女性に多い手荒れ、やけどなどがあります。

 しもやけは医学的には凍瘡といいます。寒い時期、特に朝晩と日中の気温の差が激しい初冬、春先に多く、手足、特に指先や鼻、耳などが赤く腫れ、痛痒くなってきます。予防は局所の保温に尽きますが、温水で手を洗った後などに十分に水分を拭き取らないと急に皮膚温が下がり、しもやけのもととなります。なってしまった場合、入浴時、就寝時に手足をよくマッサージすることと皮膚の血行を良くする外用剤を塗布したり、内服薬(ビタミンEや漢方薬など)を服用します。また、入浴時などに洗面器に冷水と温水を用意し、交互に一分おきぐらいに手足をつけるなどの方法も効果があります。一般的に春になると治りますが、治らない場合、内科的な病気が隠れている場合がありますので、まずは皮膚科で診察を受けるほうがよいでしょう。

 皮膚は最外層を角質というもので覆われていますが、角質層から水分が失われるとカサカサしたいわゆる乾燥肌になります。角質の水分は角質細胞間脂質(セラミドなど)と皮脂により保たれているため、皮脂の少ないお年寄りや子ども、セラミドの量が少ないアトピー性皮膚炎の人などでは冬はカサカサした肌になりがちです。角質層は外界からのバリヤーの役割を果たしているため、角質が破壊されていると、ばい菌が侵入しやすくなったり、軽度の刺激も痒みを起こしやすくなります。したがって、入浴時などに石鹸、シャンプーを使って汚れを落とすことは必要です。

 しかしながら、ナイロンタオルで強くこするのは一時的に気持ちがよいのですが、その後かえって乾燥が強くなるため禁物です。石鹸も通常は薬用のものは必要なく、安価なもので十分です。入浴剤は最近、保湿成分に優れたよいものも出ており、皮膚科でお聞きになるとよいでしょう。イオウ剤はしばしば乾燥を悪化させることがあり、注意が必要です。

 入浴後は適切な保湿剤(尿素剤、ヘパリン類似物質)、ワセリンなどをぬり、皮膚を保護します。一方、手荒れは女性が結婚や育児などにより急に水仕事が増えるためになる場合が多く、主婦湿疹とも言われます。一日に何度も手を洗ううちにカサカサしてあかぎれとなり、洗剤、石鹸などによる刺激に過敏になり、皮膚炎を生じやすくなっています。予防的に手袋(できれば木綿のものの上にゴム手袋をします)をしますが、保湿剤(カサカサ肌と同様のもの)を繰り返し塗布して皮膚を保護することも必要です。刺激が強い場合、洗剤を変えたり、あるいは濃度を薄くするなどの方法もあります。通常の方法で改善しない場合は、手にアレルギー性の皮膚炎を生じている可能性があり、皮膚科で検査して原因を調べて避けることも必要な場合があります。最近では鉢植えのトキワザクラ(オプコニカ)で手荒れを生じた例も報告されています。

 最後にやけどですが、やけどの程度は深さと広さにより判断されます。浅いやけどでも、広範囲だと重症とみなされます。一般に皮膚の薄い小児のほうがやけどは重症になりやすいため、特に注意が必要です。やけどの深さはI度からIII度にわけられます。I度は中高温の熱湯でやけどしたときなどに皮膚が赤くなる程度の一番軽いもので、数日で後も残さず治ります。II度になると高温の熱湯、熱風などによるやけどで水疱や水疱がただれた状態で痛みを伴います。10日から2週間で治りますが、それ以上かかると瘢痕を残す場合もあります。III度の熱傷は火炎、電撃症などのときに生じ、皮膚はむしろ白っぽく乾燥し、あるいは黒焦げで硬くなり痛みもなくなってしまいます。皮膚に再生能力がなくなっているため、範囲の広いものでは植皮なども必要になります。日常多いやけどは、やはり熱湯やファンヒーターなどによる熱風によるものです。受傷した場合、まず大事なことはすぐに流水(水道水で可)で20分ぐらい冷やすことです。

 この場合、衣服を着たままやけどしたのであれば、無理にはがさず、衣服の上から水で冷やすことが肝心です。小さい子どもの広範囲のやけどの場合、冷やしすぎて低体温にならないようやけどしていない部位には毛布などをかけます。そして、清潔なガーゼ、タオルなどでくるみ、医師に見せましょう。また、忘れてならないのは、カイロなどを長時間当てすぎた場合にできる低温熱傷で受傷面積は一般にせまいものですが、長い時間熱が作用することにより、深いやけどとなるため、III度の熱傷となり、治癒に時間がかかることとなります。

 早めに医師の診察を受けましょう